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07 堂安

翌10月17日はすばらしい快晴で、肇兴 の東方の山「弄報山(ろんばおさん)」の中腹、海抜580m、山道を5kmほど上ったところの「堂安(たんあん)」という村へ行くことにした。

堂安は、160戸、約800人の村で、700年の歴史をもつ。


肇興の村を東に抜けると田園がひろがり、川沿いの道を行く。


川の道が突き当たると山へ登る道になる。

山道ですれちがったおばさんは携帯電話で話をしながら歩いてきた。

通信網はけっこう整備されていて、私は中国ではポケットWifiを350RMBで買って、1分0.1RMBの使った分契約をしているが、貴州の山の中でもつながるので、農家旅館に泊ってもネット接続は問題ないし、山の中では現在位置の確認に重宝した。


山道のところどころ視界が広がるときの景色はすばらしく、谷をはさんだ向こうの山の斜面の小さな村にも鼓楼があり美しい眺めだ。


1時間ほどで「檐公(やんこん)」を祀る祠にたどり着く。

この神さまは、説明板によると、侗族地区の主要神祇で、その祠に参拝して平安を祈り、吉凶を占い、願いがかなうと「还愿柱(はいゆぁんちゅ)」という棒を奉納するのだそうだ。


祠のなかには、土地神と思われる男女神と彩色された像が2体。
一番大きな像が「檐公」だろうか。


この祠の近くの家に石敢当。


檐公廟から少し上ると鼓楼のある村に到着した。

そこが堂安かと思ったが、この村はまだその下に位置する「厦格(しゃあか)」という村だった。


村の入口に土地神の祠があったが、中は何も無い。


せっかくだからしばらく村の中を散歩した。

 
 

ここでは、小米(アワ)も干されている。ここでは、小米(アワ)も干されている。


「将军箭(じゃんじゅんじゃん)」と書かれた道しるべもあったが、これは子供の厄除けであるらしい。


堂安へ登る道を行き、草の刈られたところになると、そこは墓地になっていた。
墓は、北北西を向く。

 

ここからまた1時間ばかり山道を上り、11時ごろ堂安に到着した。


鼓楼の正面には龍の飾りと蝦や蟹、魚など水生生物が描かれている。


鼓楼の周囲には土地神の祠や戯台、泉、侗族の先祖神である「萨玛(さぁまぁ)」を祀る廟がある。


土地神の祠には三角形の石が祀られている。

三角形は、吉野裕子氏流でいえば、「女性の象徴」。


鼓楼の後方の小高いところに、「萨玛殿」が西向きにある。

 

中に「萨玛」を祀る。

これも吉野裕子氏流でいえば、円錐形の半開きの傘は、「蛇・男根」を象徴していて、それが円形の石が象徴する「女陰」に刺さっていて、男女交合を表しているようで、「神送り」を象徴したお墓である、というように解釈できる。


村は棚田で囲まれている。

 

資料館もあって入館料が5RMB.
パネル展示がおもなものだが、本に無い情報を手に入れることができる。

侗族は、海の民族「越」の末裔で、「魚」をトーテムとしている。

この画像で、「三つ巴」紋のルーツは、越のトーテムかもしれないと思った。

 

鼓楼の最上階を見ることはできないが、ここで、「木鼓」が縦に置かれていることがわかった。

これも吉野裕子氏流でいえば、「木」は陰陽五行の東・男を表し、木鼓は、男根の象徴と考えられ、鼓楼そのものの八角錐の形や鼓楼の底部中央には火を焚く炉があり、これは「火処(ほと)」の象徴と考えられるので鼓楼は女性の象徴と考えられ、、鼓楼というのも男女交合の象徴なのかもしれないと思った。


旧暦の正月1~8日に、祭りがあることを知った。


田圃の収穫後、ため池の水を抜き、中にいる魚を泥まみれになって捕る「泥人節」というお祭りがあり、池を干した後に闘牛をするそうだ。


萨玛(萨歳)崇拝。偉大な祖母。

海洋民族の「越」に由来しているので、海の女神は福建や台湾で有名な「媽祖」が有名だが、侗族も女性神を祀っているように思う。


「人は自由・平等であり、一部の人の犠牲のうえに一部の人が利益を得てはいけない」という「共同」を大事にする村の成員が守るべき「取り決め」がある。

これも海洋民として、大きな船を漕ぎだすには、共同作業が必須であるところからきているのではないかと思う。

「和を以て貴しとなす」に通じるものを感じる。


侗族は、世界で最も歌唱が好きな民族で、「飯は身を養い、歌は心を養う」と言う。


村からの眺望はすばらしい。


遥か向こうに船型の肇興が見える。

 

水を抜いた田圃で魚(鮒)を捕る人。

田圃の中に「魚巣」も見える。


バスの通る道から入る、表の寨門。


もち米の脱穀は、足踏み式。

 

働き者のおばあさん。。


「一夫婦からは一人の子供」の標語。


魔除けなど。

 

帰りは立派な花橋の架かる道を下り、舗装された街道を歩いて帰る。


帰り道で、堂安の村を見上げる。


今回の旅は秋ということで厚手の長袖シャツしか持ってこなかったが、この時期はまだけっこう暑くて、前日、肇興の土産物屋で長袖の綿のシャツを半そでに切ってもらって買い、この日は、その隣の店のおばちゃんが、うちでも買ってよ、としつこく勧めるので、、この日はその半そでシャツを着て快適にすごせたこともあり、もう1着おばちゃんの店で半袖にしてもらって買うことにした。

ポケットがついてなかったので、切り取った生地でポケットも左右につけてもらい100RMB.