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御園の花祭り

以前から奥三河の「花祭り」を見てみたいと思っていて、祭りは24時間前後にもおよんで催されるので、なかなか見に行く踏ん切りがつかないでいたが、やっと時間もとれるようになってきたので、2018年11月、思い切って見に行くことにした。

とりあえず、「東栄町の花祭り」というHPを見ると、11地区で行われていて、直近の祭りは、2018年1110(土曜日)11(日曜日)の「御園地区」の祭りだったので、まずはそこへ行くことにした。

 

花祭りとは、HPによると、

「「テーホヘ テホヘ」と夜を徹して繰り広げられる花祭は、鎌倉時代末期から室町時代にかけて、熊野の山伏や加賀白山の聖によってこの地に伝えられたと言われています。

 

「民俗芸能辞典」によると、

「神社(近年は公民館の例も)または民家の土間を舞処(まいど)とよび、中央に竈(かまど)を据えて大釜を掛け、湯をわかす。天井には湯蓋を吊り、四方にさまざまの切紙を飾り付ける。諸国の神々をここに集めて湯を献上し、その息吹のかかった霊湯を参詣者があびることで生命の復活をとげようとする湯立(ゆたて)が儀礼の根幹で、はじめに神の降臨をうながす祭事や祓い清めの歌舞があり、次いで湯桶・盆・扇・鈴・刀などの採り物を次々に取り替えながら激しく舞踏する花の舞・三つ舞・四つ舞などの青少年の舞や、翁・巫女・塩吹き・鬼などの仮面をつけた神舞が徹宵して演じられる。翁と禰宜の問答やヘンベ(反閇【へんぱい】のこと)と称する鬼の足踏みなど芸能史的に注目すべき演出が随所にみられ、また仮面を神聖視してその舞に悪霊鎮送の呪術的効果を期待する心意がいまも生きているなど民俗的にも注目される。」

 

鈴木正崇著「熊野と神楽」によると、

「三信遠の湯立神楽には、伊勢の両部神道の影響もあるが、地域への定着に際しての実践では熊野の影響が大きい。天龍川中流域に大規模な湯立神楽が集中する理由は、熊野・伊勢・諏訪を結ぶ修行者と商人の道による交流が挙げられる。」

「基本的に湯立は火と水の信仰を根底に持つ。・・・・・・火と水を同時に統御する特別の力を誇示する。」

 なるほど、「湯」とは、「火のパワー」と「水のパワー」の習合した強力なパワーの存在なのだと知る。

 さて、11月10日、「御園地区花祭行事次第」によると、「舞開始」は18時から、ということで13時半ごろ家を出て、少し遠回りになるが友人のところへ寄って、「これから東栄町の花祭りを見に行くから、行方不明になったら、東栄町だから」と伝えて、御園に向かう。

 御園地区は東栄町の中心からずいぶん山道を登ったところにあり、16時ごろ到着。

とりあえず、「お見舞い」を受付で渡す。2000円以上ということで、3000円を包む。

そこで、記念品の絵皿と食券を受け取る。

 

会場は、眺めのいい「御園集会場」で、湯釜の前で、禰宜様が二人お祓いをしていたので、行事内容の7番、「釜祓い」、もしくは、8番の「湯立て」から見ることになったようだ。

 

天井には湯蓋が吊り下がり、四方にさまざまの切紙を飾り付けられている。

写真は、「ざぜち」とよばれる切り紙。

16時20分ごろ、会場の外に設けられた祭壇に、お神輿で地元の神様が運んでこられて、お祓い、神饌、祝詞奏上、玉串奉納が行われ、


湯釜前では禰宜様が刀で「釡祓い」を行った。

ここで行事の参加者は夕食になるが、我々参観者は18時以降ということで、とりあえず売店でワンカップのお酒を購入して飲む。

18時までベンチに座って、隣で休んでいた花祭り見物の常連のカメラマンと雑談をして、「榊鬼が焚火の火を掻き揚げるのが最大の見どころであること」、「すりこぎ、しゃもじでは、顔に飯やみそを塗られる」、「湯ばやしではしっかり湯をかけられるのでカッパを着たほうがよい」という情報を得た。

18時を過ぎて、食事に行く。

野菜の煮しめと漬物、みそ汁、ご飯。そして目の前にどぉんと大きな日本酒の徳利が置かれた。

日本酒は1合飲んできたばかりだ、と思ったが、お酒の好きな私にとってはうれしい。

とはいえ、もう「ばちの舞」が始まっているので、ぐい飲み2杯で我慢してささっと食事をして舞処へ戻る。

 

この日は久々の祭り見物で、カメラはここから故障してしまうし、ビデオは、古いものと、新しく買った防水のものとで撮ったが、古いもので撮った前半は操作ミスで消してしまった。

 

一番の見ものの「榊鬼」は、深夜2時ごろ登場ということで、19時半ごろから車に戻ってひと眠りしたため、始めの鬼の「山見鬼」を見そびれてしまい、0時過ぎに舞処に戻ると、子供たちの「花の舞」の最中であった。

東栄町の花祭のHPから、「流れと舞の種類」を参考に進めると、

 

花の舞

「子供の初舞台となる舞は花の舞で、早い子は5歳くらいで祭りに参加し始めます。花の舞は盆に始まり、湯桶肩と成長に合わせて持ち物を替えて舞います。花の舞を舞い終わると少年の仲間入りをして、三ツ舞へと進んで行きます。」

どの踊りも基本的に手に持つものを変えて、同じ所作の踊りが繰り返されるので、1、2組を見てからまた車に戻って休むことを繰り返し、4時半ごろやっと「榊鬼」が登場した。


榊鬼の舞

「鬼の中でも最も重要とされる鬼で、反閇を踏み、大地に新しい生命力や活力を吹き込み、自然の恵みや、五穀豊穣をもたらす鬼といわれています。役鬼に伴う鬼として何人かの鬼が舞庭に出てきますが、これを伴鬼といいます。」

ここ、御園の榊鬼は、根の付いた榊を持つのが特徴だそうで、途中で鉞に持ち替える。

鬼が焚火を掻き揚げるのが見どころと聞いていたので、そろそろかな、というときに外の焚火のところへ行って鬼が来るのを待ち構えた。

鬼は横に焚火を掻き揚げたので、私にいろいろ教えてくれたカメラマンはもろに火の粉を浴びて、上着の何箇所かに穴があいてしまったと、後で見せてくれた。

火の禰宜~翁の舞

榊鬼が退場すると、面を着けた「翁(火のねぎ)」が登場して、「禰宜さま」と漫才調の問答をする。そして「すりこぎ(みそぬり)」と「しゃもじ(めしぬり)」が登場、人踊りすると、我々見物人の顔に味噌とめしを塗りにくるので、見物人は逃げ惑う。私は「めしぬり」に塗ってもらい、無病息災。

そんななか「おさんど(お多福)」「みこ」も登場して、舞処は混沌とした雰囲気。最後に「翁」が登場してひとまず落ち着く。

四つ舞

「青年4人が舞うもので、時間も長く複雑な所作が含まれており、強い体力と洗練された技術が必要とされます。扇・ヤチ・剣の採り物がある。」

この舞は長いので、車へもどって一休みして、湯を沸かし、カップ麺とコーヒーで朝食とする。

 

湯ばやしの舞

「この舞は最も軽快なテンポの舞で、少年4人が藁を束ねて作ったタワシ(湯たぶさとも言う)を持って舞い、舞の終盤、釜の湯を所構わずに振り掛けます。そのために舞庭も見物人もビタビタに濡れますが、この湯は「生まれ清まりの産湯」ともいわれ、この湯を浴びると病にかからないと、村人に歓迎されています。」

 

わたしは、カッパを着たほうが良いと聞いていて、幸い車にカッパの上着を積んでいたので、それを着てビデオを撮ったが、たっぷりお湯をかけられ、ズボンはかなり濡れた。無病息災。

朝鬼の舞

「舞の最後を締めくくるように、朝方に登場することが多かったことから朝鬼とも呼ばれます。」

朝鬼の伴鬼で可愛い子鬼がいた。

獅子の舞

「釜祓いの獅子、清めの獅子とも言われ、花祭りの最後を飾る舞。」

獅子舞の定番で無病息災を願う子供たちの頭を噛んでいた。

ここまででお昼の12時ごろ。

 

舞が済んだ後、「びゃっけ」を降ろす神事の「ひいな下ろし」を途中まで見て、帰途に就いた。