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古戸のしかうち神事

奥三河の東栄町の「花祭り」を見に行こうと東栄町のHPをみていて、「しかうち神事」が行われることを知った。

 

そのHPに「設楽のシカウチ行事調査報告書」が850円で手に入ることも知り、早速申し込んで手に入れた。

その報告書によると、

 

「愛知県北設楽郡東栄町、新城市(旧鳳来町)の一部には、シカウチ、シシウチ、シャチマツリなどと呼ばれる狩猟(鹿狩・猪狩)をモチーフとした祭りを伝承する村々がある。天竜川中流域のこの地域は周辺部も含めて冬の神楽の祭り、花祭の伝承地でも良く知られた地域であり、年が明け初春を迎えるとシカウチが行われる。

 

シカウチとは、草木(杉・青木などの枝葉)を材料にして形作った鹿や猪の作り物を祭場に設え、それを弓で射る神事である。弓で射た後、ミニチュアの鍬で神社床下の土を耕す真似する所もあり、予めシカの腹に入れておいた餅・ゴクを取り出して、シカの材料の枝葉とミニチュアの鍬と共に村人・参列者に分配する。

 

狩猟の祭りでああるが、作り物の鹿の腹からゴク・餅を取り出し、籾米・ミニチュア鍬・社殿下の土と一緒に各戸に配るので、豊穣祈願の意味もある。」

 

東栄町では、4か所でおこなわれているようだが、2月は他の地域の祭りを見に行ったので、2019年310日の「古戸(ふっと)」で行われるのを見に行った。

 

10時ごろ家を出て、途中間違えて古戸の一つ手前の集落の八幡神社へ行ってしまい、古戸の八幡神社には、1140分ごろ到着。

 

古戸地区は、東栄町の北部にあり、八幡神社は、普光寺と並んで鳥居が立ち、石段を上ると社殿がある。

 
 

境内には、まだ参観者や祭り関係者はなく、拝殿の向かって右側に猪のような杉の枝葉で作られた雌雄の鹿と3mほど離れて、弓の射手である「宮人」が三人座るゴザが設えてあった。

車に戻って、例によって湯を沸かしてカップ麺とコーヒー。

神事は13時からということで、12時を過ぎると、参列する地元の人たちや、カメラマンが数人やってきた。

 

そして、13時ごろになると、神事に携わる人たちもやってきて、鹿の仕上げに鹿に耳やタテガミの片御串(カタミクシ)つけたり、雌鹿の腹の下に「ゴク、サゴ(産子=胎児)」と呼ばれる小豆ご飯で作ったまん丸おにぎりを置いたり、丸い「大的」と四角の「マミ的」を並べたりする。

 

そうしたなか、この神事を取り仕切る禰宜様のような「太夫」が、本殿向かって左側の石垣の壇上に祀られている「乳母神様」のお祭りを行う。

 

そして、拝殿に移り、初午の「二歳児祈願」として、神前にて初午祝詞を奏上し、数え年二歳児の無病息災・延命長寿を祈願する。

そしていよいよ「シカウチ」が始まった。

 

雌雄の鹿に向かって左側の宮人が一番手で、まず皿に入れた御神酒を榊葉ではじいて清めてから雄鹿に向けて矢を二本打ち、見届け役が放った矢を二本拾って次の射手に渡し、二番手、三番手と矢を射っていく。次に、雌鹿、大的と同じように矢を二本ずつ射っていき、最後に三番手の射手が「マミ的」に二本射って、それが終わると、見届け役が、マミ的に付いている紐を持って走り、それを数人がマミ叩き棒で追いかけて叩き、しかうち神事は終わる。

 

弓を射るのは真似事かと思っていたが、うまく射るとかなりの勢いで矢が放たれるので驚いた。

 

そして、最後に、太夫が境内社の諏訪神社の床下の地面に半紙を敷いて種籾と床下の砂をとってミニチュアの鍬で耕す所作をして混ぜ、それを小さな半紙にとって包み、「種取り」は完了。

太夫の後、参列者も同じように種籾と砂を半紙にとって包み、雌雄の鹿の体に挿してあるある「片御串」と体の杉の葉それぞれ一本ずつを取り、雌鹿の「サゴ」をいただいて持ち帰り、これらを、恵比寿・大黒さまに供えて豊作と家内安全・無病息災をを祈るのだそうだ。

 

地元の人たちの分で無くなるかと思ったが、最後にまだ「片御串」が残っていて、私も一セット揃えて、「サゴ」もいただき、家に持ち帰った。

14時前にはすべて終了して帰路についたが、途中、道路沿いに手打ち蕎麦の店があったので寄って、16時ごろ帰着した。