エビについてのよくある質問



世界中のエビの種類数

アミやオキアミはエビなのか

エビやカニの区別

私たち日本人が食べているエビ

日本人はどれくらいエビを食べているか

名古屋の人はそんなにエビフライが好きなのか

おいしいエビはどうしてあんなに甘いのか

エビを茹でるとどうして赤くなるのか

エビがオガクズのなかでも生きている理由

エビはコレステロールが多い食べ物なのか

エビの栄養

クルマエビはどのように病原菌から体を守っているのか

エビの病気を治すワクチンは作れるのか

クルマエビをどのような餌で養殖しているのか

なぜエビの味は天然も養殖も変わらないのか

プローン(Prawn)って何?

●世界中のエビの種類数

 エビには、クルマエビのように泳ぐエビ類(遊泳類)とイセエビのように歩くエビ類(歩行類)があり、合わせて約2500種類いるそうです。
 遊泳類のなかでは、アマエビのようなコエビ類が約1600種類を占め、クルマエビ類は約300種いるがいわゆるクルマエビ類と言われる分類学上でいうところのクルマエビ属のものは28種類だそうです。
 歩行類のなかでは、イセエビ類が約120種類、最近オマールエビと呼ばれるようになったロブスターを含むザリガニ類が約300種類だそうです。(酒向昇「えび 知識とノウハウ」、武田正倫「世界のエビ類」による)


●アミやオキアミはエビなのか

 佃煮などで利用されているアミ類や、食用や養殖魚の餌などとして利用されているオキアミ類は甲殻類ですが、エビ類とは違うグループに分類されています。
 アミ類は、胸脚にハサミを持っていないこと、尾節の付け根に平衡胞を持っていること、雌は胸部に保育嚢(ほいくのう)を持っていることでエビ類とは区別されています。
 また、オキアミ類は、頭胸甲の横に鰓が出ていること、胸脚にハサミを持っていないことなどで区別されています。(多紀保彦・武田正倫ほか監修「食材魚貝大百科1」による)


●エビやカニの区別

 エビ、ヤドカリ、カニは分類学的には節足動物門甲殻綱十脚目としてまとめられている動物群です。腹部(いわゆるシッポの部分)がよく発達しているのがエビ類で長尾亜目として分けられています。また、腹部が右巻きにねじれているヤドカリ類は異尾亜目、腹部が腹側に折り畳まれているカニ類は短尾亜目として分けられています。
 しかし、これらの間には移行型の種があり、厳密に分けることは難しいそうです。体形によって遊泳亜目と歩行亜目にわけられたこともあるが、近年は卵を生み放なしてしまう群と卵を抱く群に分け、さらに後者をいくつかに分けることもあるそうで、エビ、ヤドカリ、カニという分け方は便宜的なものであるそうです。(多紀保彦・武田正倫ほか監修「食材魚貝大百科1」による)


●私たち日本人が食べているエビ

 世界中から100種類以上のエビが輸入されているが、普段食べるエビとしては、日本産、中国産、 オーストラリア産のクルマエビのほか、東南アジア産などのブラックタイガー、中国産の大正エビ、 インド産ホワイトシュリンプ、オーストラリア産バナナシュリンプ、メキシコ産ブラウンシュリプ、 ナイジェリアやギアナ産のピンクシュリンプ、ノルウェー産アマエビなどのうちのどれかである公算が大きい。このうちブラックタイガーが市場の40%を占めるそうです。(ごちそうマガジン,1993 11月号、村井吉敬「エビと日本人」による)


●日本人はどれくらいエビを食べているか

 日本の年間消費量は、アメリカと同程度の30万トン強で世界のエビの二大消費国をなすが、国民 一人当たりでは年間3キログラムで世界第一位エビフライにすると約70尾食べているそうです。 (ごちそうマガジン,1993.11月号)
 また、日本のエビ類の供給は1998年でみると、漁業生産27,000トン、養殖生産2,000トン、輸入量280,000トンと、合計31万トンとなっています。これは同時に総需要を示していますが、このような需給量は1980年に20万トンであったものが、その後増大し続けて91年に35万トンとピークに達しました。しかし、それ以降94年まで需給量は停滞的に推移して、それ以降は減少傾向を示しています。(月刊アクアネット、2000年2月号、多屋勝雄著「アクアネットQ&A、No.9」より)


●名古屋の人はそんなにエビフライが好きなのか

 かくいう私も名古屋生まれで18歳まで名古屋で育ちまして、エビは好きです。なかでもエビせんべいが大好きです。私の家族も皆好きだと言っています。しかし、名古屋の一世帯当たりのエビの購入量は3.7Kgで全国平均の3.4Kgをわずかに上回るだけで、和歌山市の5Kgにはまったくおよばない(QA,1992.9月号)。名古屋の自慢と言えば、金のシャチホコがありますが、それを遠くから眺めるとエビフライに見えないこともないのでどこかよその人(タモリが言い出したという説をよく聞く)が、ちゃかしたんではないかと思います。


●おいしいエビはどうしてあんなに甘いのか

 たん白食品である魚介類の味は、その中に含まれるアミノ酸類によるもので、エビが強い甘みを持つのは、冬期にはグリシンというアミノ酸、夏期はベタインというアミノ酸があるからだそうです( 石井金之助「エビのすべて」)。私の経験では夏より冬の方が甘みはもっと強くなり、調理したものは 砂糖で味付けしたのではないかと思うくらいに甘くなります。


●エビを茹でるとどうして赤くなるのか

 エビの色素はカロチノイド(Carotenoids)系色素のアスタキサンチン(Astaxanthine)を主として、その他数種のカロチノイドが含まれています。カロチノイドの結晶は深紅色のものが多いが、淡黄色、黄色、ダイダイ色から紅色に至る色を呈します。生きているエビの色は、アスタキサンチンとグロブリン蛋白が結合したクルスタシアニン(Crustacyanin)によるもので、緑、紫、褐色などさまざまな色合いとなります。これが加熱によって蛋白質は熱変性して、カロチノイドのアスタキサンチンとの結合が切断され、分離されます。そしてアスタキサンチンは酸化されてアスタシン(Astacene)となり、カロチノイド本来の色である黄色から赤色の色になるのです。(酒向昇 「えび 知識とノウハウ」より)

 「えび 知識とノウハウ」という本は1979年発刊されたもので、上記のような説明をずっと信じてきましたが、1999年発刊の「食材魚貝大百科1」では、上記のような説明は疑わしいとして、エビ・カニの体色変化について次のような説明がなされています。

 「エビ・カニの甲の色は、主としてアスタキサンチンと呼ばれる赤色系のカロチノイドによるものであるが、タンパク質と結合したカロチノプロテインも少量含まれている。カロチノプロテインは青ないし紫色を呈するが、加熱によって赤色になる。だが、タンパク質との結合が切れて遊離したアスタキサンチンがアスタシンになるためという説明は疑わしい。」

 「疑わしい」という表現は、「違う」と決め付けているわけではなさそうです。はっきりとした情報をご存知の方は教えてください。


●エビがオガクズのなかでも生きている理由

 エビは体が乾いていても、エラの部分さえ濡れていればエラ呼吸ができるからだそうです。エビのエラは胸の殻の内側にあり細かい毛が生えています。この毛で水を取り込み、エラ呼吸を行えるのです。エビの体は堅い殻で覆われていますが、エラの部分だけは水を取り入れるためのすき間があり、オガクズは、そのすき間を半密閉の状態にして、エビの体から出る水分を保持しているのです。こうすれば、エラは濡れているのでエビはオガクズの中でも生きていられるのです。(雑誌QA、1989年6月号)


●エビはコレステロールが多い食べ物なのか

 動脈硬化を引き起こす原因のひとつとして、コレステロールが動脈壁に蓄積するすることが挙げられています。しかし、コレステロールそのものは、体細胞を構成する材料となっていること、副腎や性腺でのステロイドホルモン合成の材料となっていること、肝臓で胆汁酸合成の材料となっていることから、生体にとって欠くことのできない重要な物質です。
 従来、貝類やエビ、カニ、イカなどはコレステロールの多い食品と言われてきました。しかし最近の研究で、それらを多く食べている漁村の人々の総コレステロール値は、農村や都市の人々のそれと比べると、農村より若干高値を示しても、都市よりはむしろ低値を示すことが明らかにされました。また、新しい測定法が開発されて、分析値が今までの測定値と比較すると一般に低値を示す傾向が認められました。それはこれらの食品にはコレステロールによく似た構造式を持ったステロール類が多く含まれており、それも含まれた値として測定されていたためであることがわかりました。このステロール類をコレステロールとともに食べると、コレステロールの腸管からの吸収が阻害されることも明らかにされてきました。
 エビなどのコレステロール含有量が従来報告されていたよりも少ないことが証明され、もともと毎日大量に食べる食品ではないので、心配することも無いでしょう。(女子栄養大学出版部、1996年発行、「コレステロール HOW TO食品選び」)


●エビの栄養

 食品成分表によりますとクルマエビの腹部の肉の成分は、水分:77.2%、タンパク質:20.5%、脂質:0.7%、炭水化物:0%、灰分:1.6%です(女子栄養大学出版部発行「ダイジェスト版(四訂)食品分析表」)。水分以外はほとんどがタンパク質とミネラルですから、低カロリー高タンパクの健康食品といえるでしょう。
 エビは、穀類に不足する必須アミノ酸を多く含んでいます。エビ、イカ、タコ、貝類には遊離アミノ酸の一種である「タウリン」が含まれ、これは血中コレステロールの量を抑制する作用があります。また、コール酸と結合してタウロコール酸となって胆汁中に存在するため、脂肪を乳化する働きがあり、コレステロール系の胆石を溶かしてしまう働きがあります。タウリンには、さらに「疲労回復」「視力回復」の効果があり、そのうえ「興奮剤」としても有効だといいます。(山本保彦「驚きのサカナ作用」)
 エビの殻にはキチン質という成分がたくさん含まれ、それは大腸ガンを引き起こすウェルシュ菌の増殖を抑えるといわれています。(大洋漁業広報室編「お魚おいしい雑学事典」)
 キチンは難消化性多糖類の一種で、植物性の食物繊維と似たような作用があり、便秘を防ぎ消化管内の有害物の排出を促すそうだ。また、キチンを少し化学変化させた「キトサン」には血中コレステロール低下作用があるそうだ。(女子栄養大学出版部発行「ダイジェスト版(四訂)食品分析表」)


●クルマエビはどのように病原菌から体を守っているのか

 魚類から人間までの脊椎動物はいわゆる免疫によって、体内に侵入してきた異物(抗原)に対して抗体を作って生体の恒常性を維持しています(獲得免疫、後天性免疫)。しかし、無脊椎動物であるクルマエビはそのような抗体をつくる能力を持たず、生体内に病原菌が侵入すると血球がこれらの菌を貪食して病原体から体を守っています(先天性免疫)。また、血液中にはリゾチーム、レクチン、補体系関連物質が存在して、侵入した病原菌を溶かしたり、凝集させたり、あるいは血球が菌を貪食しやすい状態にさせて生体を守っています。(1992年発行日本配合飼料パンフレット「クルマエビ養殖池における環境改善」、「岩波生物学辞典」)


●エビの病気を治すワクチンは作れるのか

 脊椎動物においての免疫機構は主にB細胞、T細胞のリンパ球に担われており、これらの細胞は一度やっつけた抗原を数年にわたり記憶することが出来ます。この抗原を記憶した細胞は2回目からは一度目のおよそ100倍のパワーで抗原を撃退することが出来ます。それゆえ、人為的に軽く抗原の記憶をさせておいて、本物の病原体が侵入してきたときに備えると言うのがワクチンの原理です。しかし、クルマエビ等の無脊椎動物はこのB細胞、T細胞を持たぬ故、”記憶”というシステムが存在しないと考えられているため、ワクチンに相当するものの開発は今のところ不可能だと思います。( 京都大学大学院農学研究科応用生物科学専攻 足立亨介(あだち こうすけ)さんに教えていただきました。)


●クルマエビをどのような餌で養殖しているのか

 養殖が始められた初期には、アサリや雑エビなど生餌が用いられていたが、それらの資源は限られており、運搬、調餌、投餌に多大な労力を要するので、配合飼料が開発されました。(橘高二郎他編「エビ・カニ類の増養殖」)
 現在では、数社から販売されている配合飼料を主に投餌している養殖場が多く、私も生餌は用いず、配合飼料100%です。その原材料はメーカーに問い合わせたところ「イカ粉エビ粉魚粉酵母粘結剤ビタミン類ミネラル類」との事です。
 海外の工場生産的なエビの養殖現場では、病気の予防のためにと抗生物質を飼料に混ぜているところもあるそうですが、これは耐性菌の出現に結び付きますから、国内ではそうした薬物の使い方はされていないと思います。少なくとも、私は自分が養殖場の責任者となってからの過去8年間は抗生物質など薬物の投与はしていません。(1997.05.26)


●エビの味は天然も養殖も変わらないのか

 その秘密は、体に含まれる脂肪分にあります。魚などは脂肪からくる匂いがあり、匂いは味覚に大きく影響を及ぼします。魚や肉類のような飼料に由来する脂肪臭が天然の餌を食べているものとはちがいますので、匂いで味を区別することができます。しかし、エビには脂質はわずかしか含まれておらず、エビの味はタンパク質を構成するアミノ酸に由来し、体のタンパク質を構成するアミノ酸組成は、天然も養殖も同じですから、味は変わりません。(1997.06.26)


●プローン(Prawn)って何?

 普通、英語でエビといえば、「Shrimp」、歩くエビ類は「Lobster」と呼びます。イセエビ類など「歩くエビ」意外の「泳ぐエビ」は、比較的大型で商品価値の高い「クルマエビ類」と小型の「小エビ類」におおざっぱに分けられます。アメリカ英語では「泳ぐエビ」はすべて「Shrimp」と呼びますが、本場、イギリス英語では、「クルマエビ類」を「Prawn」、「小エビ類」を「Shrimp」と区別して呼んでいます。


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